2016年2月29日月曜日

ポスドクの子育て

ポスドクは企業人に比べて比較的時間の自由が利くので、子育てがしやすい面があります。

通常時の平日は朝も夜も子供と顔をあわせることができないことが多いですが、それは企業に勤めている人も同様のようです。配偶者がフルタイムで働いている場合は、朝か夜のどちらかは食事や子供の世話をしないといけないことになりますが、これも企業人の場合と同様でしょう。土日は比較的時間がありますので、家族で買い物に出かけたり子供と公園に行くことができます。

一方、ポスドクのメリットとして、一般に企業の人より単独で仕事を進めることが多いため、緊急時に自分の都合で比較的自由に休暇を取ることができる点があります。特に子供が小さい時は風邪などで保育園を休ませないといけないことが多々ありますが、そんな時も比較的気軽に休めるのは大変助かります。ただし当然ですが、休暇を取ったために生じた研究の遅れの結果は全て自分に返ってきます。
 ブラックラボの場合は休暇を取ることも難しいのかもしれませんが、今時ブラックラボは極めて稀ですので、それほど心配しなくても良いと思います。もちろん着任前に休暇の取り方などについても確認しておくと万全です。

ポスドクは周りに迷惑をかけずに自己責任で自由に休暇が取りやすいので、急な子供のことにも対応しやすい良さがあります。 

2016年2月28日日曜日

「ポスドク」と「企業の研究者」との違い

企業研究者と比較した時のポスドクの特徴は、ズバリ

「低賃金・低雇用安定性・高研究自由度」

です。

<年収>
一流製薬企業の博士卒研究員の初任給: 約500万円
ポスドク: 約450万円

<雇用>
企業: 雇用期限なし
ポスドク: 雇用期限あり(1-5年)

<研究自由度>
企業: 根本的な研究テーマの選択の自由度は低い。しかし現場の様々な判断ではかなり自由度がある。
ポスドク: 根本的な研究テーマの選択の自由度が高い。ただし所属する研究室のボスによっては具体的に取り組むテーマを制限されることもあるので注意が必要。

企業研究者と比較した時のポスドクのメリットは、何と言っても「根本的な研究テーマの選択における自由度が高いこと」です。自分の中で知りたいことが明確になっていて、それを何としても探求したい場合は、がぜんポスドクを選択した方がいいでしょう。一方、特にこれといったやりたいことはないが、なんとなく他の人の役に立てる研究がやれればいい、というような場合は、企業に就職した方が高給与も高雇用安定性も得られますのでベターかと思います。 

2016年2月23日火曜日

「ポスドク」からの昇進

多くのポスドクは、最終的に研究室の主催者[=ボス=Principal investigator (PI)]を目指します。
 ポスドクからの昇進は、以下の3種類に大別されます。

1.PIではない(つまりnon-PIの)大学教員(助教、講師、准教授など)
2.PIである大学教員(助教、講師、准教授など)
3.理化学研究所などの公的研究機関のPI

もっともポストの数が多く一般的なのが1番です。この場合はPIであるボスが他にいますので、non-PIの大学教員は研究室の中でボスと学生の間を取り持つ中間管理職的な立場になります。その中でもっとも下っ端の助教でも、ポスドクと比べると給与や雇用安定性が高い傾向にあります。多くの人は、この立場からいつかPIになることを夢見ています。
 次に多いのが2番、次いで3番です。これらのポストは、自分自身がPIであり、研究室のボスになりますので、まさに自分の研究室をもつことになります。
 多くのポスドクは最終的に2番または3番のPIになることを夢見ています。

尚、一般的にPIになると給与や雇用安定性は高まる傾向がありますが、必ずしも同じ役職名のnon-PIより高いとは限りません。「PIとnon-PIの違い」は、まさに「ボスか否かの違い」です。基本的に、ボスになると研究方針や人事など、全ての決定権が得られます。ポスドクになる人の多くは「自由」を得るために、PIになりたいのです。

2016年2月22日月曜日

ポスドクの雇用の不安定性

ポスドクは有期雇用契約者です。多くの場合、1年毎の契約を更新していき、3-4年の間に研究成果を出して、別の研究室に異動しなければなりません。

ポスドクを雇用するための財源は基本的に「外部資金」と呼ばれる、研究室のボスが外部から獲得した資金です。多くの場合、外部資金は3-4年、長くても5年程度しか使えません。従って研究室のボスは、資金の獲得が決まった時点でポスドクを募集し、単年の雇用契約を結び、それを数回繰り返すうちに研究成果を出してもらおうと考えます。普通のボスは契約時に「外部資金で雇用するから多分3-4年間の雇用は大丈夫だと思うけどその後はどうなるか分からない」と正直に伝えてくれますので、雇用契約に関して問題になることは少ないです。

ただ、外部資金の種類によっては例えば2年毎に成果の評価があり、その評価次第で次年度以降の財源の金額が変更されたりますので、ボスからポスドクに対してプレッシャーがかけられることも珍しくありません。この場合は常に、今年度いっぱいでクビになる可能性があることを考慮しながら研究を進めていく必要が出てきます。

30-35 歳のポスドク等の 18%、36-40 歳の 32%、41 歳以上の 40%は海外での勤務経験をもちますが、安定した職の獲得には至っていません(2011年日本学術会議)。つまり海外経験があるからといって安定した職につけるとは限りません。

ポスドクの職は、極めて不安定です。楽観的な人でないと続けられないのが現状です。 

ポスドクの結婚「前」事情

ポスドクになった時点で、結婚する可能性のある相手と付き合っていないと、結婚は相当に厳しいものになる可能性が高いです。ただし医師資格を持っているポスドクは相手を探すことに関して全く問題にならないことが多いので、ここでは考慮外とします。

まず事実として、少なくとも私の知り合いであるポスドク9人について、ポスドクの時点で結婚した7人全員が、ポスドクになる前の大学院生の時点から付き合っていた相手と結婚しています。残り2名は、大学院生の時点から付き合っていた相手とポスドクになってから別れています。
 もちろんこれは単なる偶然かもしれません。ただ実感として言えることは、大学院生の時に比べて、ポスドクになってから付き合いだすというのはよりハードルが高い、ということです。大学院生の時はお互いが若く、好きなら付き合うという、比較的ノリのいい時期ですが、ポスドクになる頃には30代を目前にし、少なくともある程度結婚を意識して、相手の仕事の安定性や経済力を見定めながら付き合うかどうかを決め始める傾向があります。年齢が進むにつれ、この傾向はより強くなっていきます。ポスドクの結婚後の事情は厳しいものです。ですのでなかなかそれを受け入れてくれる相手を見つけることは容易ではありません。
 また、ポスドクになると大学院生の時のようにアルバイトをすることがなくなりますので、研究室の外で誰かと出会う機会も少なくなります。また、研究室周辺にいる学生との年齢差はどんどん開いていきますので、年を経るに従い、研究室周辺にいる異性と付き合える可能性も低下していきます。 

「ポスドクになろうと思っているけどまだ付き合っている人がいない」という大学院生は、今のうちにいい人と付き合い出すことをお勧めします。 

2016年2月21日日曜日

ポスドクの結婚「後」事情

ポスドクが結婚を決める際には、結婚後の生活に関して考慮した方がいいことが3つあります。

1つは、ポスドクの「長時間労働」です。
ポスドクは、平日は12時間程度、週末も合わせて6時間程度は研究室にいるのが一般的です。従って参加できる家事は物理的に限られてきます。このことは、特に家事が増える子育て期に問題になることがあります。
 結婚相手には、研究活動には時間がかかるために、参加できる家事が限られてしまうことを理解しておいてもらう必要があります。

次に、ポスドクの「低い経済力」です。
ポスドクは、労働時間が長い割には年収が高くありません。特にポスドクというポストへの理解が疎い人たちは、博士(ハカセ)で研究をしているの人の年収は800万とか1000万くらいだと思っている人がいますが、実情はその半額くらいです。
 結婚相手には、少なくともしばらくは年収500万円未満の状態が続くことや、たとえうまくいって50代で教授になっても年収はせいぜい1000万円程度であることを理解しておいてもらう必要があります。
 なお、結婚相手が専業主婦(夫)である場合は、例えば東大のある文京区に住むことは容易ではありません。文京区の場合、1ルームでも月8万円程度しますので、月の手取り30万円のうち1/3弱が家賃にかかってしまいます。また、子供を育てる場合には1ルームでは厳しいでしょうし、その他の費用もさらにかかりますし、相当の工夫が必要になります。

最後に、ポスドクの「低い安定性」です。
ポスドクは基本的に有期雇用契約です。多くの場合、1年毎に雇用契約を更新します。その雇用の財源の多くは年度ごとに増減しますので、常に来年度の雇用を心配しなければならない状態が続きます。

つまり結婚相手には、「家事はあまりできず、年収500万未満で、いつクビを切られるか分からない」ことを事前に理解しておいてもらった方がいいでしょう。 

ただし医師資格を持っているポスドクは、私の知り合いも空き時間のバイトで1晩に8万円くらい得られると言っていたので、経済力や安定性に関しては全く問題にならないようです。

「ポスドク」と「助教」の仕事内容の違い

「助教の種類」の項に記載した通り、特◯助教は実質的にポスドクと同じですので、以下では簡略のため「ポスドクと特◯助教」を単に「ポスドク」、「特◯助教以外の助教」を「助教」として表現していきます。

「ポスドクの仕事内容」「助教の仕事内容」を比較すると分かりますが、

「助教の仕事内容」=「ポスドクの仕事内容」+ 講義 + 実習など

といえます。講義や自習などは時間にすると1年の10%未満しか使いませんので、ポスドクと助教の仕事内容はほぼ同じ、といえます。 

「助教」の仕事内容

「助教の種類」の項に記載した通り、特◯助教は実質的にポスドクと同じですので、以下では「特◯助教以外の助教」を「助教」として表現していきます。

助教の主な仕事は「研究」です。さらに、学部生や大学院生への「教育」も担います。

助教は、所属する研究室のボスである教授や准教授に、良い研究成果を出すことを求められます。また、学部や大学院の講義や実習も担います。平均的な労働時間は、平日の12時間くらいです。

助教に任される講義や実習の内容は学部や研究室によってかなり多様ですが、平均的には年に合わせて5時間程度の講義と、1年のうち3週間程度にわたる学部生の実習指導です。他に試験問題の作成や試験監督、答案の採点などがあります。それらのための準備にかかる時間も合わせると、1年の労働時間のうち8%程度の時間を、講義や実習などに使っていることになります。

さらに、多くの場合、大学院生や学部生の研究指導・教育も担います。特に博士課程の大学院生の場合は、大学院生自身が一定の研究成果を上げられないと卒業できず、博士号も受けれられなくなってしまいますので、その指導・教育を担っている助教の責任は重大です。もちろん公的な責任は研究室のボスである教授や准教授にあるわけですが、多くのボスは特に実験に関しては具体的な指導ができませんので、助教などが面倒をみる必要が出てしまっているのが現実です。

研究活動に必要なインプットは出版されている研究報告、いわゆる論文を読むことです。普通の論文は英語で書かれていますので、素早く英文を読み、理解する力が必要です。また最終的なアウトプットは研究成果を国際誌へ投稿することですので、英文で論理を構築し、表現する能力も必要です。つまり一連の研究活動に必要な情報のインプットとアウトプットは英語で行うのが当たり前になっています。

「ポスドク」の仕事内容

ポスドクの主な仕事は、「研究」です。

ポスドクは所属する研究室のボス(大学の場合は教授や准教授、研究所の場合はリーダー)に、良い研究成果を出すことを求められます。平均的な労働時間は、平日は12時間、週末は合わせて6時間くらいです。

多くの場合、大学院生や学部生の研究の指導・教育も担います。特に博士課程の大学院生の場合は、大学院生自身が一定の研究成果を上げられないと卒業できず、博士号も受けれられなくなってしまいますので、その指導・教育を担っているポスドクの責任は重大です。もちろん公的な責任は研究室の主催者である教授やリーダーにあるわけですが、多くの教授やリーダーは特に実験に関しては具体的な指導ができませんので、ポスドクなどが面倒をみる必要が出てしまっているのが現実です。

研究活動に必要なインプットは出版されている研究報告、いわゆる論文を読むことです。普通の論文は英語で書かれていますので、素早く英文を読み、理解する力が必要です。また最終的なアウトプットは研究成果を国際誌へ投稿することですので、英文で論理を構築し、表現する能力も必要です。つまり一連の研究活動に必要な情報のインプットとアウトプットは英語で行うのが当たり前になっています。 

「研究」とは (仕事内容)

研究活動には、大別して4つの活動があります。

一つは「研究の立案」です。
 研究活動の主要で根本的な動機には「知的好奇心」と「社会貢献」、「名誉欲」、「金銭欲」の4つがあります。研究者によってそのいずれか、もしくは複数の動機により、研究活動を始めます。「何を知りたいのか?」「それが分かると何が面白いのか?」「社会にどんなインパクトがあるのか?」「誰がその成果を気にするのか?」「ノーベル賞が取れそうか?」「教授になれそうか?」「特許が取れそうか?」各人の欲望に従い様々なことを考慮しながら、これまでの知見を徹底的に調べ上げた上で、自分の研究テーマを決めます。次に、具体的にどんな実験をすればそのテーマの答えを出せるのかを考えます。
 これらのプロセスは、その後展開する研究活動の「設計図作り」とも言える、大変重要な知的活動です。基本的に半年ほどの時間をかけて一旦完成させ、次の活動に移行しますが、その後出てくる自分自身で行った実験結果や、他の研究者の研究報告などに合わせて随時修正する活動を続けます。

次は、実験を行うための「資金の獲得」です。
 実験を行うためには様々な試薬や器具、装置が必要です。それらは高価なものが多く、例えば大型の装置になると1000万円ほどかかることも珍しくありません。それら試薬や装置を購入する資金を獲得するために、国や民間企業の研究支援の公募に申請します。申請の際には、研究目的や研究計画、過去の実績などを記載した書類を提出する必要があり、それらを元に審査されます。採択率は公募の種類によってかなりの差がありますが、科研費補助金などの国の主要な公募の場合は30%程度、民間の場合は10%程度です。「さきがけ」などの高額な支援を受けられる一部の公募では、採択率が1%以下というものもあります。最近ではクラウドファンディングなどを活用して、一般の方からの直接の寄付を募る方法も定着しつつあります。
 このような様々な機会を利用して、研究計画の遂行に必要な研究資金を獲得します。申請準備自体にかかる時間は1ヶ月程度ですが、審査結果が出て実際に資金が使えるようになるまでに半年ほどかかります。

次はいよいよ「実験の遂行」です。
 基本的に「資金獲得」の申請書に記載した内容に沿って実験を始めますが、多くの場合、想定していた通りの結果は出てきません。随時、出てくる結果に合わせて次の実験計画を修正しながら進めます。
 研究活動全体のうちこの活動が最も時間のかかる部分で、一人で行う場合、通常3-4年はかかります。

最後に「成果の報告」です。
 「実験の遂行」結果をまとめて、国内外の学会で発表したり、国際誌に投稿したりします。これを完遂して初めて、これまでの活動が「業績」として評価されるようになります。学会での発表はほとんど意味がありませんが、他の研究者とのコネを作る上ではいい機会になります。そのコネによりポスドクから助教への昇進が決まったり、次の共同研究が決まったりします。最も重要なのは国際誌へ投稿し、受理してもらうことです。国際誌と一言でいってもピンキリで、どのレベルの雑誌に掲載されたかによって、その仕事への評価がまるで変わってくるのが現実です。ですので、いわゆるトップジャーナルといわれるCell, Nature, Scienceなどの雑誌に自分の研究成果を掲載してもらうことが、多くの研究者の目標になっていたりします。
 仕事の成果が国際誌に受理された時点で、一連の研究活動がひとまず完了、となります。投稿の準備におよそ半年、そこから受理されるのに半年から1年程度かかるのが一般的です。

このように、一連のひとまとまりの研究活動は、全体としては6-7年の時間と、人件費を除いて1000万円以上の資金を費やして完成されます。多くの研究者は、このようなひとまとまりの研究活動を2つくらい並行して遂行しています。

なお、ここでは一人の研究者が最初から最後まで一人で完遂するような表現になっていますが、実際はこれを研究室や数人からなるチーム単位で進めることが一般的です。大学院生やポスドクはこの一連の4つの活動全てに参加し、先輩の指導を仰ぎながら様々なスキルを学んでいくことになります。
 ただ、研究室によってはこれら活動は分業化されており、例えば最初の「研究の立案」と「資金の獲得」、「成果の報告」は主に教授やリーダーなどのボスが行い、ポスドクや大学院生は主に「研究の遂行」に従事していたりします。いわゆる「ブラックラボ」と呼ばれる研究室ではこの分業化が極端に進んでおり、ポスドクや大学院生がまるで奴隷や機械のように長時間働かされて、挙げ句の果てに成果は全部ボスに吸い取られたりますので、研究室を選ぶ際には十分な注意が必要です。

2016年2月20日土曜日

「助教」の年収 (給料・給与)

助教には大別して5つの種類がありますが、年収で区別すると

「リッチ」助教グループ
「プワ」助教グループ

の2つのグループに分けることができます。

「リッチ」助教グループに属するのは

1.任期無し助教
2.任期あり助教(再雇用の回数制限なし)
3.テニュアトラック助教
4.任期あり助教(再雇用の回数制限あり)

の4つで、平均年収はいずれも650万円くらいです。

さらに多くの場合、毎年給与が年5万円くらいずつ自動的に増額されます。

一方、「プワ」助教グループに属する

5. 特◯助教(特任助教・特定助教・特命助教・特別助教)

の平均年収は450万円くらいです。

「ポスドク」と「助教」の年収 (給料・給与)の違い

理系ポスドクの平均年収は450万くらいです。
特◯助教(特任助教・特定助教・特命助教・特別助教)も同程度です。

一方、

1.任期無し助教
2.任期あり助教(再雇用の回数制限なし)
3.テニュアトラック助教
4.任期あり助教(再雇用の回数制限あり)

平均年収はいずれも650万くらいです。

なお、前者のグループと後者のグループの仕事内容はほとんど同じで、違いは、後者のグループに講義や実習などの仕事があるだけです。しかしそれらに費やす時間は1ヶ月程度で、年間の10%未満です。もしこの10%で、上記の通り年収で200万円もの差を説明しようとすると、講義や実習により助教は1日10万円程度を受け取っていることになります。

多くのポスドクが助教になりたがる明確な理由の一つが、ここにあります。

「ポスドク」の年収 (給料・給与)

理系ポスドクの平均年収は450万くらいです。

特に生命系に限定すると、約40%の人は年収が400万円以下です(2011年日本学術会議)。

「助教」という名称が付いているだけで実質的にポスドクである「 特◯助教も同等です。

多くの場合年俸制で、社会保険費や税金が引かれて月額の手取りが30万くらい、年額で360万くらいです。ボーナスはありません。社会保険の内容は民間や公務員、助教とほぼ同じです。

たまに時給制ということもありますが、普通は「常勤」扱いなので、毎日細かく時間を計られて給与に反映されるようなことはありません。ただ「非常勤」になると完全にバイトですので、給与の算出方法を雇用主にしっかり確認しておいた方がベターです。

ちなみに、同じポスドクの中でも「日本学術振興会特別研究員」のPD, SPD, RPDに採用されると手取り年収がそれぞれ約435万(PD, RPD), 約535万(SPD)と高額になります。
 ただしこのポジションは非常に特殊で、国とも大学とも雇用関係がありませんので社会的にはフリーターです。失業保険や年金、健康保険などの社会保険も一切付いてませんので全て自分で手配する必要があります。また、雇用証明がありませんので、小さな子供がいる場合は保育園などへの入園申請時に問題になることがありますので注意が必要です。

また、理研研究員は平均年収が700万程度と、ポスドクとしてはかなり高待遇です。



2016年2月19日金曜日

「助教」は9割5分、コネで決まる

大学の助教ポジションの9割以上は、コネで決まります。

大学の助教ポジションのほとんどは、講座制を基本とした研究室内のポジションです。研究室には教授や准教授といったボスがいます。研究室の助教ポジションの人事権は、その研究室のボスにあります。従ってボスが気に入った人が、助教になります。ボスが気に入るのは、その研究室で大学院生やポスドクだった人だったり、ボスの知り合いの人の知り合い、だったりすることが殆どです。つまり「コネ」です。ボスの機嫌をとることが上手い人ほど、助教になる確率が高まります。
 一方、その割合は1割以下ですが、助教を公募することがあります。この場合は、学会やJREC-INなどを通じて求人情報が出ますので、そのボスとコネがなくても一応応募することができます。しかしこの場合も最終人事権はボスにあり、結局何らかのコネのある人が通りやすいのが現実です。

このように、大学の助教ポジションの9割5分はボスとのコネで決まりますので、エラい人に気に入られるように振舞うことで助教になれる確率は高まります。 

2016年2月18日木曜日

「助教」の種類や違い

大学の助教と一言で言ってもピンキリです。ここでは研究室によって大きく異なる「研究内容の自由度」は考慮せず、主に「雇用の安定性」や「年収・給与」を鑑みて、好待遇の順に並べてみます。

1.任期無し助教
2.任期あり助教(再雇用の回数制限なし)
3.テニュアトラック助教
4.任期あり助教(再雇用の回数制限あり)
5.特◯助教(特任助教・特定助教・特命助教・特別助教)

一番好待遇なのは「任期無し助教」です。特に問題を起こさなければクビになることはありません。

次は「任期あり助教(再雇用の回数制限なし)」です。任期付きなので気分的に不安定ですが、これも特に問題を起こさなければ普通は自動的に繰り返し再雇用されますので、実質的には任期無し助教と同じです。

その次が「テニュアトラック助教」です。多くの場合、5年間の雇用の後に審査があり、それに通ると「任期無し助教」もしくは「任期あり助教(再雇用の回数制限なし)」に異動できます。落ちた場合は次の職を探さなければなりません。ただしこのポジションの最大の特徴は「PIである場合があること」にあります。

次が「任期あり助教(再雇用の回数制限あり)」です。多くの場合、再雇用は1回のみです。雇用期間は3-5年ですので、6-10年以内に次の職に異動する必要があります。

最後に「特◯助教(特任助教・特命助教・特定助教・特別助教)」です。名前は色々ですが、実質的に同じポジションです。これらは多くの場合単年契約で、最長3-4年で次の職に異動しなくてはいけません。多くの場合外部資金を元に雇用してますのでいつ切られるか分からない不安定さがあり、また給料も他の1-4に比べて約3割引です。実質的にポスドクと同じです。

「ポスドク」から「助教」になると昇進しているイメージですが、助教の種類によってはポスドクとそれほど変わりません。当然、上記1-4の助教ポジションに就くことを希望する人が多いですが、ポストは限られており、ほとんどコネで決まるのが現実です。

2016年2月17日水曜日

「ポスドク問題」とは

ポスドク問題とは、ポスドクから昇進できずに中年になってもポスドクを続けざるを得ない人が溢れている社会問題のことです。

数十年前までは、日本ではポスドクというポジションは一般的ではありませんでした。大学院で博士号を取得後、いきなり雇用期限のない大学教員などになるのが当たり前でした。しかし制度の欧米化に伴い、博士号取得者と雇用期限のない大学教員などの間にポスドクというポジションが導入されました。さらに1996年から2000年まで、「ポストドクター(=ポスドク)等一万人支援計画」という施策が行われ、ポスドクが大量に生み出されました。一方、雇用期限のない大学教員などのポジションの数はほとんど変わりませんでした。結果として、雇用期限のない大学教員などに昇進できないポスドクがどんどんと増えてしまったわけです。

最近は日本国内で雇用期限のない大学教員などのポジションにつくのを諦め、海外で類似のポジションについたり、企業などに就職する中年ポスドクが増えています。また、こういった中年ポスドクの厳しい状況を鑑み、大学院で博士号を取得後、ポスドクにならずにすぐに企業に就職する若手も増えています。

「ポストドクター(=ポスドク)等一万人支援計画」に煽られて博士号を取得した人たち、およびその後を追った人たちの多くは、今35-40歳前後の中年ポスドクとして溢れています。彼らの雇用条件は本当に厳しいものです。これが、ポスドク問題です。 

2016年2月16日火曜日

「ポスドク」とは (意味と概要)

ポスドクとは、大学院で博士号を取得したのちに、大学や非営利の研究所で有期契約の研究職に就いている者や、その職自体を指す語です。英語圏のpostdocの日本語訳で、博士研究員とも呼ばれます。

ポスドクの雇用条件はかなり多様です。
 当該職が正規のこともあれば非正規のこともあります。
 給与も理系の場合年収で400万から600万程度と、かなり幅があります。

また、昨今の研究職の多様化により、ポスドクと類似職との境界が曖昧になってきています。
 例えば特任教員や特命教員、テニュアトラック教員などは、「教員」という職名が付いていますが、ポスドク同様、有期契約の職で、実質的にポスドクです。テニュアトラック教員については、契約期間終了時に審査があり、それに通れば契約を延長できたり、期間の定めのない職に移行できることもありますが、少なくとも有期契約中は実質的にポスドクです。
 また、「特任」や「特命」がついていない、正規の教員職(単に助教、講師、准教授、教授など)でも、有期契約の職が増えてきています。3年契約の正規の国立大学医学部教授もいます。

従って、ポスドクとは「博士号取得者」「有期雇用」「研究職」で特徴付けられる、と言っていいでしょうが、実質的にはほぼ同じ条件の大学教員職もあるため、それらとの境界は曖昧です。