2017年12月24日日曜日

卓越研究員の倍率

平成28年度卓越研究員の倍率が公表されました。

申請者数 849名
候補者数 176名
決定 87名

最終的に、倍率は約10倍、ですね。

卓越研究員のメリットなどについては先の投稿に書きましたが、要約すると

[無期雇用の場合]
無期雇用+研究費 (5年で2400万円)

[有期雇用の場合]
研究費のみ (5年で2400万円)

かと思います。

相当厳しいですねー

2016年10月28日金曜日

卓越研究員事業(Leading Initiative for Excellent Young Researchers(LEADER))


優秀な若手研究者に、安定かつ独立した研究をさせるという趣旨。

研究者は、事前に各研究機関から提示されたポストに応募する。
ポスト一覧に掲げるポストのうち、推薦が必要なポストについては、ポストを提示した機関の推薦を受けることが必要。
研究機関は一つのポストに対して複数の推薦が可能。
推薦が必要なポストに応募する場合、研究者は応募前に希望する研究機関の推薦を受けていないと、たとえ文科省の選抜を抜けても当該研究機関と雇用契約が結べないので、必ず推薦を受けてから応募する。

応募時期: 4月上旬から5月上旬
応募翌年度の4月1日時点で40歳未満。つまり年度で考えて応募時期までに誕生日が来ない人(大部分の人)は、38歳での応募がラストチャンスなので要注意。

研究費として1-2年目 600万円/年(人文科学は400万)
研究環境整備費として1-2年目 300万円/年(人文科学は200万)、3-5年目 200万
が国から支給される。

給与は研究機関から。
つまり研究機関にとってのメリットは、5年間で2400万円(人文科学は1800万円)が国から支給されること。
デメリットは卓越研究員に環境を提供し、独立した研究をさせるためのコスト。
研究機関にとってはひとまず国から資金の支給のある5年間、応募者にテニュアトラックをさせるには丁度いいだろう。

応募者のメリット

[無期雇用の場合]
無期雇用+研究費

[有期雇用の場合]
研究費のみ

今有期雇用の人は、無期雇用はもちろん有期雇用でも研究費がつくのでメリットはある。

今無期雇用の人は、有期雇用に応募する必要はもちろんないが、無期雇用に応募することで研究費が得られるメリットはある。

勤務地などの条件が合うのであれば、今、有期雇用の人はガンガン無期雇用に応募しよう。テニュアトラックに応募するメリットももちろんある。 

ちなみに平成28年度の倍率はこちら

2016年5月16日月曜日

「ポスドク」の福利厚生

生命系ポスドクの福利厚生に関して、2011年日本学術会議で報告された内容をご紹介します。

以下の福利厚生を利用可能な人の割合です。
健康保険     88%
通勤手当     64%
住宅手当     33%
退職金         13%
(回答者数 1147人)

私の場合、健康保険はありましたが、それ以外はなかったので、住宅手当や退職金を受けている人がいるのかと驚きました。

PI(ピーアイ)とは

研究室を主宰する研究者のことを、Principal investigator、略してPI(ピーアイ)と呼びます。

すなわちPIとは、「自分の研究室を持っている人」のことです。

多くの場合、大学の「教授」や研究所の「リーダー」という役職についていますが、大学の「准教授」や「講師」、中には「助教」でもPIの人がいます(テニュアトラック助教の一部がそれです)。

役職別に、PIである確率は、おおよそ

教授、リーダー     100%
准教授                    10%
講師                         5%
助教                         1%

といった具合です。

ただしこれは日本に限定した話で、海外では通常、講師という役職はなく、准教授や助教でもPIであることが一般的です。

PIとnon-PIの決定的な違いは、「自由度の高さ」です。

PIには、研究室の研究内容や人事など、基本的に当該研究室に関する、全ての決定権があります。

と同時に、全ての責任があります。

研究員を雇ったり、研究活動に必要な機器や消耗品を購入するための資金を調達したり、学生が学位を取れるように指導する必要が有ります。

まさに、「独立」であり、「一国一城の主」です。

そういう意味では、「PIになってからが、研究者としての本当のスタート」とも言えますが、多くの研究者は、まずはPIになることを夢見て、ポスドクや助教などの役職をこなしながら実績と経験を積んでいます。 

2016年5月14日土曜日

大学院生の研究室選びの、ただ一つのポイント

結論から言いますと

「当該研究室に所属している、博士課程の大学院生に、学術振興会特別研究員(学振)に採用されている人の割合が高いほど良い」

です。

大学院生なら誰でも学振に採用されたいと思います。毎月20万ほどの給与が得られますし、履歴書にかける実績にもなります。

多くの人が申請するため、採用されるためには実績はもちろん、申請書がしっかりかけていなければいけません。しかし大学院生が一人で採用されるための実績と申請書を用意できることは稀です。

つまり当該研究室の大学院生のうち学振に採用されている人の割合が高いことは、その研究室の教員の研究指導が優れていることを示す手がかりの一つになります。

そんな研究室に入ることができれば、当然、あなたが将来学振に採用される可能性も高いわけです。 

もちろん学振が取れるかどうか、ということに限らず、優れた研究をするための良質な教育が受けられる可能性も高いわけです。

さらに、そいういう研究室には優れた先輩や同輩、後輩が集まっています。優れた研究仲間とのつながりは、研究者にとって生涯の財産になります。

「どんな研究室がいいのか分からない」という人にとっても、その研究室の博士課程の院生の「学振に通っている人の割合」は定量的な明瞭な判断材料になります。最近は研究室のホームページに掲載しているところも増えていますし、研究室の人に直接聞いてもいいと思います。

ぜひ、参考にしてみてください。

2016年5月8日日曜日

運動で研究のストレスを発散し出すと危険

私はこれまでの経験から、自分の同僚や後輩が急にランニングなどの運動をしだしたら、それは「危険信号」だと解釈しています。

これまでに8人くらい、そのような行動をしだす人を見てきましたが、8人中8人が、運動をし始めてから研究の質が低下、もしくは停滞しました。

因果関係は分かりません。しかし急に運動し出すことは、質が低下もしくは停滞することの「サイン」になっていると感じています。

これは私の解釈ですが、急に運動を始める人は、一定のストレスを抱えているように思われます。研究室で研究をしている人間の場合、そのストレスの原因が研究活動にあることを想像することは難しくありません。

実際、研究室で急に運動をしだす人は、たいてい、研究がうまく進んでいません。

運動をすることで、ポジティブな気分にする必要が生じてしまっているのだと思われます。しかし残念ながら、運動をしても研究がうまくいかないことに変わりはなく、むしろうまくいかない状態で心理的に適応してしまうため、好転する機会が失われているように思われるのです。

研究でストレスを受けたら、運動で発散するのではなく、そのストレスを受け止めてなんとか乗り越えるためのアイデアを練ることに集中する方が研究の質は向上する、と思っています。

2016年5月7日土曜日

国立大学と高専の教員の年収の比較 (同一年齢)

国立大学教員と高専教員の平成26年度の平均年収(年間給与額)を役職別に比較したところ、全ての役職において、大学教員の方が高専教員よりも年収が高いことが分かりました。

同様に、国立大学教員と高専教員の平成26年度の平均年齢を役職別に比較したところ、全ての役職において、大学教員の方が高専教員よりも年齢が高いことが分かりました。

これらのことから、国立大学教員の平均年収が高専教員より高いのは、平均年齢が高いからかもしれない、という疑問が湧いてきました。

そこで、年齢差を考慮した状態で年収を比較することにしました。

具体的には、

「各役職の教員の平均年収を、同じ役職の国立大学教員の平均年収で割った値」



各役職の教員の平均年齢を、同じ役職の国立大学教員の平均年齢で割った値

で割りました。

こうすると、国立大学教員については、どの役職もその値は全て「1」になります。

それに対して、例えば高専教員の平均年収が国立大学教員の0.8倍で、平均年齢も0.8倍の場合、その値は「1」になります。この場合は、国立大学教員も高専教員も、同じ年齢では同じ年収だ、と解釈できます。

また、例えば高専教員の平均年収が国立大学教員の0.8倍で、平均年齢が0.6倍の場合、その値は「1.33」になります。この場合は、同じ年齢では高専教員の方が年収が高い、と解釈できます。

さて、以下が結果です。



「同一年齢で比較した場合、どの役職でも、高専教員の平均年収は国立大学教員の9割程度」

であることが分かります。

かなりすっきりした結果ですね。

データ元: 独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準一覧(平成26年度)